「経国美談」（けいこくびだん）は、矢野文雄（龍渓）が書いた政治小説です。 前編と後編の2冊から構成され、前編が１８８３年（明治16年）3月に発行された とき、大変好評を博しました。読者は続編の発を望んでいたので、病気の休養を することになったのを利用して、若林に口述してまとめ、１８８４年（明治17 年）2月に後編が発行されました。

内容は、古代ギリシャを舞台にして、ペロビダス、エバミノンダスの2人を主人 公に、テーベという国の勃興の歴史を描いています。
前編はテーベの志ある人たちがテーベの国に民政を回復するまでの活躍を描きま した。

後編はスパルタの侵略を退けてテーベがギリシャの盟主となる過程を描いていま す。

この小説は、翻訳と創作の中間的な作品で、後編の巻末に「速記法のことを記 す」と一文を載せ、小説冒頭を書いた若林の速記符号を掲載しました。それによ って、「速記」という言葉が広がった。「速記」という術語はその後、漢字文化 圏に広がり、中国、韓国でも「速記」という言葉が用いられています。