「文明開化」という用語は、1875年（明治8年）、福沢諭吉が『文明論之概略』 の中で、civilizationの訳語として用いたのが始まりでした。

極東と呼ばれたアジア東部は、江戸時代末期、欧米列強の植民地化競争の対象と なり、日本にも、鎖国をやめて開国することを求めるかたわら、アメリカのよう に不平等条約を押しつけて圧力を高めていました。

日本は西欧文明に学び、早く追いつき、列強の仲間に入ることを目指しました。
そのような中で、国内では自由民権運動が高まり、北海道開拓使の官有物払い下 げ事件は癒着事件として社会問題化し、結果的には維新で体制が変わって23年目 にして、国会を開設することとなったのです。

速記は国会開設という目標を得て、西洋文化を採り入れる形で日本語版が設計さ れ、教育が始まりました。速記を実用化することに成功したのが、田鎖綱紀の 「日本傍聴記録法」でした。
手書き速記はその後、多くの人材が出てきて、高度化がはかられ、高速度化と普 及が進みました。

一方、大正中期に、欧米の書字機械を用いる機械速記が紹介されましたが、工業 技術の未発達から、日本語への応用は進まなかった。しかし、文字改革運動の中 で、高速度に話し言葉を固定する手段として、ローマ字運動家が取り組んで、佐 伯功介、川上晃という人材を得て、太平洋戦争末期にプロトタイプを完成するに 至るのです。
戦争後、実用化された機械速記は緒方富雄の命名により「ソクタイプ」と呼ばれ るようになりました。 さらに、遠藤基資によって、ＣＡＴ（電算支援反訳）システムが開発され、その 後リアルタイム処理も可能な方向へ発達しました。 コンピューターによる自然言語処理研究の成果として、現在自動音声認識技術が 実用化段階に入り、速記符号の話し言葉を固定する手法と同じ効果をもたらして います。