記録担当者の資質について考える際のポイントを次に挙げる。

１）聞く能力

�@ 集中して聞ける時間は、元国際基督教大学の斎藤美津子氏は「続・話し ことばの科学、聞き方の理論」の中で、「普通のおとなはだいたい１５分ぐらい、（集中しようとすれ ば）集中できるそう　です。３０分間集中することは、涙ぐましい努力。４５分間持続できる人はほ とんどいないし、また最大限だそうです」と書いている。

�A 話し手と同等以上の知識、理解力
理解できない話は書けない。速記界には「知らない言葉は聞こえない」 ということわざがある。
言葉がわからなければ聞き取れない。

�B 話し方（声、速さ、大きさ）
誤聴の主因は聞こえにくさ。斎藤氏は(1)相手の話のスピード､(2)きき 手の思考のスピードを挙 げる。両スピードはほとんどずれがあるという。速度と、発話の不明瞭 さ、不完全な文章、さらに環境雑音などが関係して、誤聴を生じる。 話し手の癖がつかめていないと、聞き取りにくくなる。 顔、口元が見えるよい位置に席を取ることが聞き取りには大切といえる。

２）聞き方

�@ 受け身の聞き方：話し手を受け入れて内容理解に集中できる。

�A 能動的な聞き方：発展的展開を図る主観的な聞き方で、肯定的なスタンス で聞く。

�B 中立の聞き方 ：話し手の立場、問題点を知って、ニュアンスの差がわか る。

�C 批判的な聞き方：反論するために聞く主観的な立場。否定的なスタンスで 聞く。

３）書き取りの目的

�@ 事実（発話事実ありのままの筆記）：書記・速記者の聞き方

�A 真実（発話意図と内容の筆記）　 ：報道関係者の聞き方

４）聞く行為における５つのポイント

�@ 速度（筆写速度、記載速度）

�A 理解力（教養と予備知識）

�B 客観性（公平に、主観的に、客観的に聞く）

�C 論理性（話を線と面で聞く）

�D 利害（頭の中を白紙にして、利害関係を持たない）